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2001年12月

『9・11』
byオースティン・勢津子 (カリフォルニア在住)


九月十一日。ワールド・トレードセンターで兄が仕事をしているというアメリカ人の友達は、小さい子ども達を不安がらせないために、目に涙をいっぱい溜めて我慢していた。「きっと大丈夫よ」と言う以外に何もできなかった私だが、その後「兄から電話があった」と聞いた時は心底 ホッとした。
八階にいた彼女のお兄さんは、飛行機がビルに衝突した時点で避難したそうだが、その時点では事の重大さが理解できず、その後、ビルが崩壊してからは混乱で連絡を取るのに苦労した。友人に連絡があったのは九時間後のことだった。
九月十一日以来、アメリカ人の態度にはかなりの変化が見られる。元々愛国心の高い国民性であるが、星条旗や星条旗のステッカーが品切れになるほど売れた。小学校では赤、白、青の星条旗カラーを着る日を設けたり、右手を胸にあてて国歌や国に忠誠を誓う言葉 "Pledge of Allegiance" を、今迄以上に熱心に教える教員達の姿がある。うちの子供たちも学校で配られたコピーを手に一生懸命練習していた。また、在米日本人の中にも国旗を掲げるなど、「テロに屈しないアメリカを応援する」意を示す人々の姿が多く見られた。

さびしかったハロウィン

これまで『自由』の主張の下に多くの外国人旅行者、留学生、ビジネスマンを受け入れ、難民や移民に市民権を与えてきたアメリカ。そのアメリカで外国人の受け入れ体制の見直しが叫ばれ、空港では武器を手にした軍人を見かける。
私が住むサウス・カリフォルニアのメキシコ国境でも警備が厳しくなり、以前は三十分とかからなかった検査が、四、五時間はかかる。メキシコ系アメリカ人の友達は「故郷が遠くなった感じがする」と嘆く。
テロ事件の影響は数知れず。毎年ハロウィンには、私の家にも何十人という子供達が仮装してキャンディをねだりに来るのが、今年はなんと、家に来たのはたったのニ人!「テロリストがキャンディに毒物を入れる可能性があるので、なるべく控えた方がいい」という声があり、教会やごく内輪だけですます家庭が多かったようである。沢山キャンディを買っておいた私は、がっかりというのが実感だった。

郵便物を受け取る恐怖

さらに、追い討ちをかけるようにAnthrax(炭疽菌)騒動がアメリカの日常生活を不安へと駆り立てている。フロリダの、発見された場所からそう遠くない所に住む私の妹は、当初「外に出たくない」と不安がっていた。知名度のある人達を狙った行為とは思っても恐怖は拭えない。私は郵便受けを調べる時には必ずゴミ袋を持って行って、広告や送り手がよく分からない物は開けずに袋に入れ、そのまま外のゴミ箱に運ぶ。
アメリカはツインタワー崩壊後、心を落ち着かせる暇もない Anthrax 騒ぎで抗生剤のシプロが飛ぶように売れ、今度は Smallpox(天然痘)ではないか?と騒いでいる。この様な噂が広まる度に一般国民は振り回され、薬を手に入れようと必死になったり、空港を避けたりしている状態だ。自由の国アメリカの自由が狭められてきている事を実感せずにはいられない。



 
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