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2000年12月
トルコ:ミレニアムは民族大移動?
by ハクセヴェル・ひろ子(イスタンブール在住)
かの方舟を造ったノアが洪水の後にたどり着いたアララット山があり、かつて聖母マリアが晩年を過ごし、聖パウロが布教のため伝道した地でもあり、またサンタクロースこと聖ニコラスの出身地でもある現在のトルコ共和国。ところが、トルコ人のルーツは六世紀頃から突厥(現・中国領)より移動してきた民族であり、国民の九〇%以上がイスラム教徒。キリスト教に縁の遺跡が山ほどあっても、所詮、異教徒の遺産という訳。キリスト誕生から二千年の節目にあたるミレニアムにも目もくれず、なんとも勿体ない話です。
しかしトルコにキリスト教色がないかと言うと、そうでもなく、イスタンブール各地のショッピングセンターでは、年末になるとどう見てもクリスマス風の派手なツリー(サンタのかわりに熊のぬいぐるみやスヌーピー等が飾られている)や、赤や金のモールが登場するのです。
さてそんなトルコの年末年始ですが、十一月の二十日から十二月の二十六日までラマザン(断食の月)で、十二月二十七日から二十九日はラマザン・バイラムという断食明けのお祭りを迎えます。昨年までの三年間は断食と新年が重なって、二千年のカウントダウンを除いてはとっても地味だったのですが、今年こそは元旦にお祝い気分を味わえそうです。
ここで日本人には馴染みの薄い『断食』について。断食は「三十日間食事を絶ち、食事を満足に食べられない人々の苦しみを知る」という、イスラム教徒に課せられた義務のひとつ。細かい決まりはいろいろあるようですが、夜明けのコーランの祈り(=エザン)から日没のエザンの間に食事、水分を摂らないのが原則です。夜明け前の食事をサフル、日没後の食事をイフタルといいますが、サフルは眠い目をこすりながら、イフタルはぺこぺこのお腹をなだめるために次から次へと食べまくるので胃袋が踊ってなかなか大変。私が数年前に夫と友人夫婦でレストランにイフタルを食べに行った時は、三階建てのレストランが究極にお腹を空かせた人々で満席。エザンとともに数百人が一斉に食べ始める様子は壮絶!でした。
さて、苦しい断食を終えて盛大に祝うのがラマザン・バイラム、またの名をシェケル・バイラム。シェケルとは砂糖とかキャンデーの意味で、親戚や友人宅をまわりながら、断食疲れの胃袋にそれは甘い、甘いお菓子を詰め込むのです。バイラムは日本のお盆や正月のように故郷で祝うのが普通で、トルコはさながら民族大移動に。いつもはガラガラで飛ばし放題の高速道路が制限速度を守る(!)車で渋滞します。今年は年末にラマザン・バイラム、しかも仕事始めが一月二日なので、ひょっとすると西欧諸国がミレニアムの花火を打ち上げて盛り上がっている頃、トルコ国民は極限状態のお腹を抱えて倒れているか、あるいは移動疲れで早々と寝ているのかもしれません・・・。
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